ビルドアップとは髪の毛にシリコンが蓄積された状態です。ビルドアップを被膜毛と言うこともあります。
インバス・アウトバストリートメントに配合されているシリコンは、髪にツヤと滑らかさを出しそれを保つため、髪に吸着をさせます。
しかし、シャンプーの洗い方やすすぎ方が正しくないと、吸着したシリコンが髪の毛に蓄積されます。
場所により蓄積量が異なり、凹凸ができると、髪が光を反射しにくくなり艶がなくなって見えます。手触りはごわつき、纏まりが悪くバサバサになるなどのトラブルを引き起こします。
こちらの記事では、ビルドアップ(被膜毛)の原因、防ぎ方、正しい対処法を解説していきます。
Yuuki
【コスメ部】の監修者・総責任者。
化粧品会社で11年勤め、化粧品開発とマーケティングを経験し、化粧品成分、薬事法、景品表示法の実務経験を積む。毛髪、皮膚の科学から、化粧品原料データ、消費者データまで化粧品分野において多岐に渡る経験と知見を持っています。
シリコンが髪に蓄積するビルドアップ(被膜毛)とは?
ビルドアップとは、シャンプーやトリートメントに配合されているシリコンのコーティング剤が、シャンプーで落とし切れずに髪の表面に蓄積された状態を言います。髪の毛を膜のように覆っている状態のため被膜毛とも呼んでいます。
シリコンは油性の成分で、シャンプーやスタイリング剤に含まれる添加剤の1つです。シリコンが髪の表面に滑らかで目に見えない「薄い膜=被膜」を作ることで、髪のキューティクルを守り、髪に艶を出したり、ツルツルと指通りを良くし、髪の水分の蒸発も防ぎます。
リンス、コンディショナー、トリートメントには配合されていることがほとんどです。
シリコンが重なって蓄積し、被膜が厚くなります。これがビルドアップ(被膜毛)により発生する髪のゴワゴワです。被膜毛が厚くなると、髪自体が太くなるので、髪は必然的に広がります。
シリコンの蓄積は凹凸を作り、光の反射が弱くなるため髪の艶が失われます。凹凸が酷いと、髪がざらざら、バサバサになります。
シリコンは油性成分のため、ビルドアップはべとつきも生じます。その結果、髪が乾きにくくなります。また、ヘアカラーを入れるにもキューティクルが開かないため、カラーの入りも悪くなります。
このように、ビルドアップ(被膜毛)はいいことがありません。
「シャンプーの効果がなくなった」はビルドアップが原因?
普段使っているシャンプーが、急に効果がなくなった経験ありませんか?
「感動したのは最初だけ」「段々効果がなくなってきた」などの現象は、ビルドアップが原因の可能性があります。
シリコンは悪い成分ではありませんが、髪質とシリコンは相性があります。
配合量も商品によって異なり、成分表の1%未満は順不同表示なので、配合量は分かりません。また、シリコンには様々な種類があり、自分の髪にぴったりなシリコンの種類を知っている方は非常に少ないです。
商品によっては、シリコン以外のコンディショニング成分をほとんど配合せず、シリコン頼りの商品があります。
シリコン頼りの商品は、ビルドアップを引き起こす可能性がより高くなります。
ビルドアップ(被膜毛)になる4つの原因とは?
ビルドアップの原因はさまざま要因が重なって引き起こります。主な原因は4つです。
- ・使用するシリコンの量が多い
- ・髪質とシリコンが合わない
- ・シャンプーの洗浄力が弱い
- ・すすぎが足りない
順に見ていきましょう。
使用するシリコン量が多すぎる
シャンプーやトリートメント以外でも毎朝使うスタイリング剤やヘアオイル、洗い流さないトリートメントなどにもシリコンが含まれています。
日常的に使い続けるとシリコンが蓄積されビルドアップの原因になります。
コンディショナーよりもトリートメントの方がシリコン以外のコンディショニング成分が配合されている場合が多いため、コンディショナーよりトリートメントを使う方が良いです。
ただし、名称は「トリートメント」と記載され、成分表にシリコン以外のコンディショニング成分が記載されていても、シリコン以外のコンディショニング成分は微量しか配合されず、シリコン頼りとなっている商品もあります。
日本では、成分を0.000000000001%配合するだけでも「この成分が髪に艶をもたらす効果を期待できる」など表現することができてしまいます。
髪質と主成分のシリコンが合っていない
コンディショナーやトリートメントを使うときに、どのシリコンがもっとも多く配合されているかを確認する必要があります。
シリコンの種類 | 効果と特徴の傾向性 |
ジメチルシリコーン | ジメチコンなどで分子量の大きさで、サラサラ感があるものからしっとりと重い質感まである。 |
揮発性シリコーン | シクロペンタシロキサンなどサラサラで軽いテクスチャに仕上がる。他の成分との混ざりを良くするためにも使われる。 |
アミノ変性シリコーン | アモジメチコンなどでカチオン化して毛髪に吸着されやすくしたシリコン。纏まりやすいのが特徴ですが、落としにくい。 |
ポリエーテル変性シリコーン | ジメチコンに界面活性剤をくっつけており、髪に馴染みやすく、落としやすい。ゴワツキやベトツキもしにくい。 |
代表的なシリコンは「ジメチコン」です。ジメチコンは安価で効果の出やすい成分です。髪に痛み少なく、普通~細めの方であれば合いやすいです。
ジメチコンを主成分とし、髪に重さを出して毛先まで滑らかにしようとすると、ジメチコンの量を単純に増やす必要があります。
シリコンが主成分で「毛先までしっとり滑らかになる」と感じる成分は、ジメチコンの量が多い処方になっているとも言えます。
また「アモジメチコン」の配合量が多いと、「ジメチコン」より少量でも重さが出てしっとりしますが、髪が細い方の場合、重すぎてしまいべとつくことがあります。また落ちにくい特徴があるので、ビルドアップしやすい成分とも言えます。
以上のように、シリコンには様々な種類がある上に、髪との相性もあり、更には成分表を見ただけではどのくらいの配合量かも分かりません。
シャンプーの洗浄力が弱すぎる
巷では髪の毛と頭皮に優しいアミノ酸系のシャンプーが多く販売されています。
アミノ酸系シャンプーは洗浄力が弱いため、髪の毛と頭皮に優しい反面、髪に付着しているシリコンを充分に落としきれない可能性があります。
蓄積したシリコンは、洗浄力が強いシャンプーで落とせますが、アミノ酸シャンプーでを使うとシリコンが残ってしまうので、長め時間でシャンプーを行い、しっかりとすすぎをすることが大切です。
すすぎが足りていない
髪トラブルの原因の多くはシャンプーの際のすすぎ不足です。
シャンプーするよりすすぎが大事、と言われるほど重要なことと言えます。
特にトリートメントはサッと流したほうが、髪に成分が残って良さそうと思われがちですがそれは間違いです。
しっかりすすぎをしないと、シャンプーやトリートメント成分が髪に残り、ビルドアップの原因になります。
ビルドアップ(被膜毛)の5つの症状とは
ビルドアップになると髪に悪影響を及ぼします。症状は以下の通りです。
- ・髪がべとつく(ドライヤーも乾きにくい)
- ・髪に艶がなくなる
- ・髪が広がる
- ・髪がごわごわする
- ・ヘアカラーが入りにくくなる
主な症状を見ていきましょう。
髪がべとつく
シリコンは油性成分のため、ビルドアップになると油分が髪に蓄積されている状態となり、髪にべとつきが出やすくなる可能性があります。
シャンプーした後も髪に油分が残った状態になるため、ドライヤーでも乾きにくくなります。
もしシャンプーを変えたら髪がべとつきだしたと感じる人は、ビルドアップが原因の可能性があります。
しかしシャンプーを変えたときの髪のべとつきの原因は複数あるので、言い切ることはできませんが、ビルドアップの可能性はあります。
シャンプーと髪のべとつきの原因の関係はこちらの記事をご覧ください。
髪に艶が無くなる
髪に蓄積したシリコンが凹凸を作り、光を反射しにくくなるため、髪に艶が無くなったように見えます。
ガラスや鏡など平らな面がキレイにあると光を反射するのと同様です。
髪にシリコンが付着し続けることでキューティクルが乱れ、髪の表面がデコボコになり結果艶がなくなるという事もあります。
髪が広がる
艶がなくなるのと同様、髪にシリコンが蓄積され太くなり、凹凸のせいで整頓されていない状態のため、髪にまとまりがなくなり、広がりやすくなります。
特にくせ毛の人はさらに髪の状態が悪化するかもしれません。
また、髪の毛が乾きにくくなるため、一部湿った状態で放置することもあり得るため、乾ききらない髪の毛が広がってしまいます。
髪がバサバサ・ゴワゴワする
髪の毛に微妙な凹凸があれば、確実に手触りを悪くします。
これがゴワゴワの最大の原因です。
また、シリコンが付着した状態はいわば油が髪に付着し続けるのと同じであり、油で髪の毛がカチカチにコーティングされている状態だと、シャンプーやトリートメントのヘアケア成分も髪の毛に浸透しないでしょう。
髪表面の凹凸に加え、トリートメント成分まで弾いてしまう結果、髪がゴワゴワした状態になってしまいます。
ヘアカラーが入りにくくなる
ヘアカラーを入れるにもキューティクルが開きにくいため、カラーの入りも悪くなります。
ヘアカラーは、キューティクルを開かせて、髪内部から染めていくため、キューティクルの密度がしっかりとしている髪には色が入りにくくなります。
ビルドアップされたシリコンは、良くも悪くも強力にそれを整えて蓋をしているため、ヘアカラーが入りにくくなります。
ヘアカラー前には、シリコンを除去するシャンプーで、しっかりとシリコンを落とす必要があります。
ビルドアップ(被膜毛)の治し方【4つの方法】
髪にさまざまな症状を引き起こすビルドアップですが、治すにはシャンプー・トリートメントの見直しが重要になります。
- ・洗浄力が高いシャンプーで洗う
- ・炭酸シャンプーを使う
- ・すすぎ方をみなおす
- ・シリコン以外のコンディショニング成分がしっかり入っているアイテムを選ぶ
どうすれば改善できるのでしょうか。対処法を解説していきます。
洗浄力が高いシャンプーで洗う
ビルドアップは髪に付着したシリコンが落ちきらず、蓄積している状態です。
しっかり髪の汚れとシリコンを落とすには、洗浄力の高い高級アルコール系のシャンプーを使うことです。
代表的な洗浄成分は、ラウレス硫酸Naやラウリル硫酸Naですが、洗浄力がとても強いため、注意は必要です。これらの洗浄成分に慣れていないと、髪は広がりパサつきを感じるようになります。
同じ高級アルコール系の洗浄成分で「オレフィン(C14-16)スルホン酸Na」という成分があり、ラウレス硫酸Naやラウリル硫酸Naよりは洗浄力が弱いので、おすすめです。
炭酸シャンプーを使用する
炭酸シャンプーとは、通常の洗浄成分のシャンプーに炭酸ガスが含まれており、汚れを浮かせる効果がある炭酸が含まれたきめ細やかな泡が、髪や地肌を包み込みスッキリ洗い上げます。
洗浄力が強い界面活性剤のシャンプーは髪の毛や頭皮を痛める可能性がありますが、炭酸が含まれるとマイルドな洗浄成分でも、洗浄力がアップし、優しさをある程度保ちながらもキレイに洗浄することができます。
特にビルドアップ(被膜毛)には有効で、髪の毛に蓄積されたシリコンをキレイさっぱり落としてくれます。
炭酸は毛穴の汚れや余分な皮脂も落としてくれるので、普段使っているシャンプーと炭酸シャンプーを使い分けするのがおすすめです。
すすぎの方法を見直す
すすぎは洗髪する際に最も丁寧に行う必要がある重要な工程です。
シャンプーやトリートメント後はいつもよりすすぎの時間を長くしてみましょう。さらにシャワーヘッドを地肌に当てながら洗い流したり、専用のブラシでブラッシングしたりするのも効果的です。
正しいすすぎの方法は「シャンプーの正しいすすぎ方」をご覧ください。
シリコン以外のコンディショニング成分もしっかり入ってるものを選ぶ
髪のサラサラ・つやつやを「シリコン頼りにしない」ことは大事です。
シリコン以外に、シリコンの役割を担うコンディショニング成分が入っている商品があります。
シリコン代替成分はほとんどが油性のものですが、シリコンとは性質が異なりべとつきが少なく、ビルドアップの心配もありません。
また、シリコンの中でも、アミノ変形シリコンと呼ばれるアミノプロピルジメチコンや、乳化能力を兼ねそろえたポリシリコーンなどは、コンディショニング効果に優れながらも、ビルドアップも起こりにくい成分になります。
まとめ
ビルドアップとは何か、原因と詳しい対処法を解説しました。
ビルドアップは髪がダメージしている状態です。
普段使っているヘアケア製品は正しく使用しないと髪のダメージの原因になります。
もし髪の調子がおかしいなと感じたら、ビルドアップが原因かもしれません。
この記事を読んで、ビルドアップしない美しい髪を保ちましょう。